B cells promote insulin resistance through modulation of T cells and production of pathogenic IgG antibodies.
Winer DA, Winer S, Shen L, Wadia PP, Yantha J, Paltser G, Tsui H, Wu P, Davidson MG, Alonso MN, Leong HX, Glassford A, Caimol M, Kenkel JA, Tedder TF, McLaughlin T, Miklos DB, Dosch HM, Engleman EG.
Nat Med. 17(5) 610–617 May 2011.
【まとめ】
内臓脂肪組織(VAT)ヘのT細胞・マクロファージの浸潤による慢性炎症は、肥満に関連したインスリン抵抗性・耐糖能異常の特徴である。この研究では、B細胞がこの過程にどのように影響しているかを検討した。食事による肥満(Diet-induced obesity: DIO)マウスのVATにはB細胞が蓄積し、B細胞を欠損させたマウスではに高脂肪食を負荷しても、体重増加にも関わらずインスリン抵抗性を示さない。B細胞の糖代謝への影響は、炎症性T細胞・マクロファージの活性化と病原性のIgG抗体産生が関与している。B細胞を欠損させるCD20抗体を投与するとインスリン抵抗性が消失し、IgGを投与するとインスリン抵抗性がもたらされる。さらに肥満のヒトにおけるインスリン抵抗性では、IgGの特有のプロファイルが見られる。これらのことから、インスリン抵抗性におけるB細胞の重要性が指摘され、以上の知見がインスリン抵抗性の診断・治療に役立つと考えられる。
【論文内容】
インスリン抵抗性の原因の一つは、VATのマクロファージ浸潤による慢性炎症である。すなわち、高脂肪食(HFD)負荷による肥満(DIO)マウスのVATにおいて、M1マクロファージが、炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6)を放出していることがインスリン抵抗性の一因と言える。T細胞もVATの炎症に関与しており、炎症性CD8+T細胞やIFN-γ産生CD4+T細胞が肥満によるインスリン抵抗性に関与しているという報告がある。逆に、VATのFoxp3+ regulatory T細胞には炎症に対し保護的な効果がある。マクロファージやT細胞に比べ、B細胞についてはインスリン抵抗性の発症への関与が今までほとんど知られていなかった。
DIOマウスにおいてB細胞は糖代謝を障害する
HFD負荷マウスのVATにおいて有意なB細胞の蓄積、IgGの産生が認められた。このB細胞蓄積のインスリン抵抗性への影響を検討するため、B nullマウス(免疫グロブリンμ重鎖欠損マウス=成熟B細胞が作られない)にHFDを負荷した。その結果、HFD-WTマウスに比べて体重に差はないが、空腹時血糖は低下し、インスリン抵抗性が改善した。さらにHFD-B nullマウスにHFD-WTマウスからB細胞を腹腔内注入すると、耐糖能が悪化した。正常食(NCD)負荷WTマウスからのB細胞注入では悪化は起きなかったため、HFD由来の病原性(pathogenic) B細胞がインスリン抵抗性を惹き起こすことが分かった。
HFD-WTマウスとHFD-B nullマウスを比較すると、後者の方が炎症性M1マクロファージが少なかった。VATのstromal vascular cell(SVC)の培養上清では、HFD-B nullマウスの方がIFN-γが少なかった。また全身の resistin、PAI-1濃度も少なく、DIOマウスにおいてB細胞は全身および局所(VAT)の炎症を起こしていると考えられる。。
B細胞はT細胞と協調してインスリン抵抗性を悪化させる
B細胞機能へのT細胞の影響を明らかにするため、HFD負荷RAG-1 nullマウス(リンパ球が欠損)にHFD-WTマウスのB細胞を注入した。しかし、このマウスでは(HFD-B nullマウスにHFD-WTマウスのB細胞を注入した場合と違って)HFDによるインスリン抵抗性は改善しなかった。したがってインスリン抵抗性改善のためには他のリンパ球が必要と考えられる。B細胞は、CD8+とCD4+のT細胞に、それぞれMHC classⅠとclassⅡを介して抗原提示することによって活性化させる。そこで、HFD-B nullマウスにHFD負荷したMHC classⅠ欠損とclassⅡ欠損のマウスのB細胞を注入した。しかしHFD-WTマウスのB細胞を注入した場合と違って、IFNγの産生およびインスリン抵抗性の増悪は起きなった。したがって、B細胞のT細胞(CD8+とCD4+の両方)への抗原提示がインスリン抵抗性発症に重要であると考えられる。
IgG抗体はインスリン抵抗性のメディエーターである
HFDによる肥満はVATのB細胞におけるIgG産生亢進を伴うため、HFD負荷およびNCDマウスの血清から精製したIgGをB nullマウスに腹腔内注入した。どちらのIgGを注入したマウスも体重に差はなかったが、HFD-IgG (pathogenic antibody)を注入したマウスでインスリン抵抗性・耐糖能の悪化が認められた。
B細胞の除去はインスリン抵抗性を改善する
マウスCD20特異的なモノクローナル抗体(注:ヒトCD20モノクローナル抗体はrituximab)を用いて、HFD負荷マウスのB細胞除去を行うと、体重減少は見られないが、VATからのIFNγ・TNFαの産生低下、インスリン抵抗性・耐糖能異常の改善が認められた。
【結論】
B細胞は病原性IgGの産生を介して肥満によるインスリン抵抗性の発症に関与している。VATにrecruitされたB細胞がT細胞を活性化しIFNγを産生、これがM1マクロファージを増強することで炎症性サイトカインの産生、インスリン抵抗性の悪化につながると考えられる。