Brain PPAR-γ promotes obesity and is required for the insulin-sensitizing effect of thiazolidinediones.
Lu M, Sarruf DA, Talukdar S, Sharma S, Li P, Bandyopadhyay G, Nalbandian S, Fan W, Gayen JR, Mahata SK, Webster NJ, Schwartz MW, Olefsky JM.
Nat Med. 2011 May;17(5):618-22.
【まとめ】
ニューロンにおけるPPARγの役割を検討するため、ニューロン特異的PPARγ欠損マウス(Pparg-BKO)を作製した。Pparg-BKOはコントロール(Pparg f/f)と比較して、高脂肪食(HFD)負荷に伴い摂食量が低下、エネルギー消費が増加、体重は減少した。レプチン投与にもよりよく反応した。チアゾリジン系薬剤(TZD)であるrosiglitazoneを投与すると、rosiによる過食、体重増加は少なかった。高インスリン正常血糖クランプでは、rosiはHFDに伴う肝臓のインスリン抵抗性を改善するが、Pparg-BKOではその効果が全く見られなかった。したがって、HFDによる体重増加は一部はニューロンのPPARγによるエネルギー消費低下と過食によるものであり、ニューロンのPPARγはTZDの肝臓のインスリン感受性促進作用に必要である。
【論文内容】
ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはHFDによる体重増加が少ない
TZDは、脂肪合成や体液貯留だけでなく摂食を促進することで、体重増加をきたすことが知られている。これには脳のPPARγの作用が関連していることが示唆される。そこで、この研究ではsynapsin I Cre-LoxPシステムを用いて、Pparg-BKOを作製した。このマウスでは、ニューロン(脊髄、脳幹、視床下部、など)でPPARγの発現が欠損していることを確認した。このマウスとコントロール(Pparg f/f)マウスに高脂肪食を負荷すると、Pparg-BKOでエネルギー消費が増加、摂食量が低下し、体重が増加した。また、レプチン濃度に差はなかったが、Pparg-BKOマウスでレプチン感受性が亢進していた(レプチン投与によりレプチン受容体下流のSTAT3リン酸化が亢進)。
ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはTZDに伴う過食が少なくエネルギー消費が多い
HFDを負荷したPpar-BKOマウスとPparg f/fマウスに高脂肪食を負荷後、rosiを投与したところ、コントロールマウスではrosiによる過食・体重増加が見られたが、BKOマウスでは体重増加は50%程度に減少していた。また、BKOではrosi投与に伴いWATにおけるUcp1、肝臓におけるUcp3の発現が増加し、エネルギー消費が増加、すなわち脳のPPARγはエネルギー消費を制限していることが明らかになった。
ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはTZDに伴う肝臓のインスリン抵抗性改善が見られない
Ppar-BKOマウスはrosiによる耐糖能改善が少なく、クランプにおけるGIR(グルコース注入率)、GDR(糖取りこみ)が少なかった。しかし、rosiによるHGP(肝糖産生)の抑制は見られなかった。さらに、rosiによる肝臓でのインスリンシグナル伝達の亢進(AKT、GSK3、ERK1/2のリン酸化増加)もPpar-BKOマウスでは認めなかった。
【結論】
①ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはレプチン感受性が亢進しており、高脂肪食による肥満が起こりにくい。②また、このマウスはrosiによる過食や肝のインスリン抵抗性改善が起こりにくかった。すなわち、脳のPPARγは高脂肪食による過食・肥満のメディエーターとなっており、rosiに伴う過食・肝のインスリン抵抗性改善作用を担っていると言える。