A role for central nervous system PPAR-γ in the regulation of energy balance.
Ryan KK, Li B, Grayson BE, Matter EK, Woods SC, Seeley RJ.
Nat Med. 2011 May;17(5):623-6.
【まとめ】
この研究では、エネルギーバランス調節における中枢神経系のPPARγの役割を明らかにした。チアゾリジン系薬剤(TZD)でよく見られる副作用は体重増加である。ラット中枢神経系のPPAR-γを急性に活性化(TZD投与)または慢性に活性化(constitutive activeであるVP16-PPAR-γを視床下部に過剰発現)させると、正のエネルギーバランス(過食、体重増加)を示した。内因性のPPAR-γの活性化をPPAR-γアンタゴニストやshRNA発現によって阻害すると負のエネルギーバランス(食欲低下、体重減少)となり、高脂肪食(HFD)に伴うレプチン抵抗性が改善され、TZDによる過食が抑制された。
【論文内容】
視床下部のPPAR-γは急性・慢性の活性化で過食、肥満を引き起こす
TZDは、PPAR-γ活性化させ過食、肥満を引き起こすことが知られている。そこで、TZDであるrosiglitazone (rosi)が視床下部にあるPPAR-γを活性化し、エネルギーバランスを変化させるのではないかという仮説を立て、ラット第3脳室にrosiを注入する実験を行った。その結果、摂食が亢進し体重増加が起こった。また、このラットでは脳室周囲のc-Fos活性化(ニューロンの活性を表す)が起こっていた。次にリガンドなしでもconstitutiveに活性化するPPAR-γであるVP16PPAR-γをlentivirusベクターを用いてラット視床下部に過剰発現させたところ、同じく過食と肥満が起こった。 視床下部のPPAR-γは急性にも慢性にも食欲と体脂肪を増加させることが明らかになった。
中枢神経系のPPAR-γ活性化をGW9662によって阻害すると、負のエネルギーバランスとなる
次に末梢からrosiを投与し(rosiは脳血管関門を通過する)、脳室内にPPAR-γ アンタゴニストGW9662を注入したところ、または視床下部にPPAR-γのshRNAを注入したところ、rosiによる体重増加は阻害された。さらに、高脂肪食負荷ラットにGW9662を脳室内投与したところ、摂食と体重増加が抑制された。このラットはコントロールの高脂肪食ラットに比較して、血漿中のTSHが5倍以上高値であった。このことはPPAR-γと hypothalamic-pituitary-thyroid (HPT) axisとの関連を示唆している。
中枢神経系のPPARγ活性化をGW9662で抑制するとレプチン感受性が亢進する
高脂肪食による肥満の特徴は、レプチン抵抗性である。高脂肪食マウスにGW9662を投与すると、レプチンの標的遺伝子であるLPLの発現が低下した。このマウスにレプチンを腹腔内投与すると、摂食の低下と体重減少が認められ、レプチン感受性が亢進していることが分かった。
【結論】
以上の結果より、今まで知られていなかった視床下部のPPAR-γによるエネルギーバランスの中枢調節が明らかになった。PPAR-γ関連薬剤による体重増加は少なくとも一部はこの中枢性PPAR-γの調節によって説明できる。PPAR-γの内因性リガンドは不明だが、何らかの脂質とその代謝産物がリガンドではないかと考えられており、脂質がレプチン抵抗性をきたすメカニズムの一つは、視床下部のPPAR-γを介するものなのかもしれない。