一人抄読会

syodokukai.exblog.jp
ブログトップ

アディポネクチンはマウス肝細胞において、LKB1-AMPKシグナル伝達非依存的に糖新生遺伝子発現を抑制する

Adiponectin suppresses gluconeogenic gene expression in mouse hepatocytes independent of LKB1-AMPK signaling.

Miller RA, Qingwei Chu Q, Le Lay J, Scherer PE, Ahima RS, Kaestner KH, Foretz M, Viollet B, Birnbaum MJ.

J Clin Invest. 2011;121(6):2518–2528, Published online May 23, 2011.

【まとめ】
アディポネクチンは、AMPK活性化を介して肝の糖産生を抑制することにより血糖を低下させると考えられている。このグループでは、肝臓特異的LKB1欠損マウスを作製し、アディポネクチンのシグナル伝達を検討した。LKB1欠損は、アディポネクチンの血糖降下作用を一部障害したが、アディポネクチンによる他の効果(肝の糖新生遺伝子発現やクランプにおける肝糖産生)は保たれた。また、LKB1、AMPK、またはCRTC2がない状態のprimary hepatocyteでも、アディポネクチンによる糖産生抑制、糖新生遺伝子発現の低下が起こった。したがって、アディポネクチン作用の一部はLKB1を介するものであるが、LKB1/AMPK/CRTC2に非依存性のシグナル伝達経路が存在する。

【論文内容】
AMPKは、エネルギー不足の状態、すなわちAMP/ATP比が増加すると活性が上昇するプロテインキナーゼであり、上流のAMPKK(LKB1およびCamKKβ)によってリン酸化・活性化され、下流のACCやCRTC2(別名TORC2*)をリン酸化する。これにより、筋肉の脂肪酸酸化や糖取り込みの増加、肝での脂肪合成、糖新生の低下が起こる。LKB1は主要なAMPKKであり、例えば肝臓でLKB1を欠損させると血糖上昇・耐糖能障害が起こることから、肝糖産生の重要な調節因子と考えられている。
アディポネクチンの血糖降下作用は肝のAMPK活性化を介するものと考えられ、実際マウス肝でdominant negative AMPKを発現させるとアディポネクチンによる血糖降下が阻害される。しかし、アディポネクチンの肝での作用がすべてAMPKを介するかは明らかではない。

肝のLKB1のコンディショナルな欠損マウスではアディポネクチン作用が部分的に障害される
ウイルスベクターを用いてCre recombinaseを肝で発現させ、肝でのコンディショナルなLKB1欠損マウスを作製した。このマウスでは血糖が上昇するが、インスリンが高値でインスリンシグナル伝達(Aktリン酸化など)も増加していた。このマウスでは、アディポネクチン投与による血糖降下および肝糖産生抑制が部分的に障害されていた。すなわち、アディポネクチンにはLKB1依存性・非依存性の肝糖産生抑制の作用がある。さらに、肝での遺伝子発現(G6pcなど)はLKB1欠損で増大するが、LKB1欠損マウスにアディポネクチンを投与するとコントロールと同様程度にまで抑制された。したがって、LKB1を欠損させてもアディポネクチンの肝の遺伝子発現低下に大きな影響はないことが分かった。

primary hepatocyteにおいて、アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にLKB1/AMPK/CRTC2は必要でない
次にアディポネクチンの肝糖産生抑制作用は、肝細胞のアディポネクチン受容体によるものか、他の臓器からの影響によるものかを検討するため、肝臓LKB1欠損マウスからのprimary hepatocyteでのin vitro実験を行った。LKB1欠損hepatocyteでは、AICAR・phenformine・アディポネクチンによるAMPKリン酸化およびRaptor(AMPK target)が消失していた。このLKB1欠損hepatocyteで、dibutyryl-cAMP(db-cAMP)によって起こるG6pcなどの遺伝子発現増加・糖産生の増加は、アディポネクチンによって低下した。したがって、primary hepatocyteでもアディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にLKB1は必要でないと考えられた。

アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にAMPKが関与していることを検討するため、AMPKのα1とα2の両方が欠損しているprimary hepatocyteを用いたところ、上記のLKB1欠損同様、アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制・糖産生抑制があり、アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にAMPKは必要でないと考えられた。

CRTC2はAMPKによってリン酸化(不活性化)されるCREB coactivatorである。CRTC2欠損マウスのprimary hepatocyteをグルカゴン刺激すると糖新生遺伝子の転写促進が起こったが、アディポネクチンを添加したところこの促進は抑制された。

【結論】
アディポネクチンの肝での作用は、一部はLKB1を介するが、肝でのLKB-1欠損マウスでもアディポネクチンによる糖産生抑制・糖新生酵素の抑制が起こることで示されたように、LKB-1非依存性のシグナル伝達経路が示唆される。primary hepatocyteにおいて、アディポネクチンによる肝糖産生抑制・糖新生遺伝子抑制にLKB1/AMPK/CRTC2は必要でないという結果からも、これらのシグナル伝達とは独立の経路が存在することが示唆される。

*ここでのTORC2は、transducers of regulated CREBの略で、mTORC2(mTOR complex 2)とは別物であるので注意。
[PR]
by md345797 | 2011-05-25 17:09 | シグナル伝達機構