人気ブログランキング | 話題のタグを見る

一人抄読会

syodokukai.exblog.jp
ブログトップ

MicroRNAs 103/107はインスリン感受性を調節する

MicroRNAs 103 and 107 regulate insulin sensitivity

Trajkovski M, Hausser J, Soutschek J, Bhat B, Akin A, Zavolan M, Heim MH, Stoffel M.

Nature. Published online 08 June 2011.

【まとめ】
In vivoで、microRNAがインスリン感受性を調節しているかどうかは分かっていない。この研究では、miR-103/107の発現が肥満マウスで亢進していることを明らかにした。これらをsilencingすると糖代謝、インスリン感受性が改善され、肝臓・脂肪組織でこれらの機能を亢進させると糖代謝が障害された。インスリン受容体の主要な調節因子であるcaveolin-1がmiR-103/107のターゲットであり、miR-103/107の阻害によりcaveolin-1が増加すると、インスリン受容体の安定化によってインスリンシグナルの増強、脂肪細胞サイズの低下、インスリンによるグルコース取り込みの増加が認められた。これらの結果から、miR-103/107はインスリン感受性の調節に重要であり、肥満・糖尿病治療の新たなターゲットになるものと思われた。

【論文内容】
肥満・インスリン抵抗性の状態で変化しているmiRNAを同定するため、ob/obマウス、高脂肪食負荷マウスの肝臓を用いて、マイクロアレイ解析を行ったところ、miR-103/107の発現が亢進していることが分かった。ヒトの肝生検を行ったところ、正常とウイルス性肝炎の肝臓ではこれらの発現が同様であったが、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では発現が増加していた。また、患者のHOMA indexとmiR-103/107の発現には正の相関が認められた。

アデノウイルスを用いて、正常マウスの肝にmiR-107を過剰発現させたところ、耐糖能が悪化し、インスリン感受性の低下、肝糖産生の増加が認められた。miR-103/107をsilencingさせる"antagomir" を作製して(ant-103)、ob/obマウスと高脂肪食マウスに全身性に投与したところ、耐糖能とインスリン抵抗性の改善、肝糖産生の低下が認められた。これらのマウスでは代謝(O2消費、CO2産生)が亢進しており、脂肪細胞におけるβ-酸化遺伝子の発現増加が認められた。

肝臓にのみ特異的にmiR-103/107の発現を消失させるant-103をliposomal formulationを用いて投与しても、ob/obマウスの血糖、インスリン値、耐糖能は改善しなかった。これは、脂肪組織でのmiR-103の発現が肝臓・筋肉に比べ8倍多いためと考えられ、miR-103/107のsilencingの脂肪への影響を検討したところ、小型脂肪細胞が増加している(脂肪分化が促進されている)ことが分かった。このマウスのprimary adipocyteを単離し、in vitroでインスリン刺激したところ、糖取り込みが増加、adiponectinが増加していた。

また、マイクロアレイを用いたゲノムワイド発現解析によって、miR-107で発現が低下する遺伝子としてcaveolin-1 (Cav1)が同定された。Cav1はインスリンシグナル伝達を活性化する(細胞膜のcaveolaeとそれに結合するインスリン受容体を安定化させる)。ob/obマウスの肝臓・脂肪組織でmiR-103/107をsilencingさせると、Cav1の発現増加とインスリン受容体(IRβ)の増加、IRβとAktのリン酸化の増加が認められた。脂肪組織にmiR-107をアデノウイルスで過剰発現させると、Cav1の発現低下、IRβとAktリン酸化の低下が認められた。

さらに、高脂肪食負荷したCav1欠損マウスにmiR-103/107を過剰発現またはsilencingしても、糖代謝とインスリンシグナル伝達には影響はなかった。しかし、脂肪組織でのlipolytic遺伝子発現には変化が見られたため、miR-103/107にはCav1非依存性の経路もあると考えられた。

【結論】
miR-103/107はインスリン感受性のnegative regulatorである。これらはインスリン抵抗性または脂肪肝の肝臓で発現が亢進している。全身性にmiR-103/107をsilencingすると肝臓・脂肪でのインスリンシグナル伝達が亢進するが、肝臓のみでsilencingしても代謝改善には不十分である。脂肪組織でのmiR-103のsilencingがインスリン感受性改善に重要である。このメカニズムの一つとしてCav1がターゲットと考えられ、Cav1の低下がインスリン受容体の安定性の低下とインスリンシグナル伝達の低下につながる。肥満動物におけるこれらの知見は、糖尿病の新しい治療に貢献すると考えられる。
by md345797 | 2011-06-14 20:40 | インスリン抵抗性