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ヒトとマウスでの、podocyte機能と糖尿病腎症におけるmTORの役割

Role of mTOR in podocyte function and diabetic nephropathy in humans and mice.

Gödel M, Hartleben B, Herbach N, Liu S, Zschiedrich S, Lu S, Debreczeni-Mór A, Lindenmeyer MT, Rastaldi MP, Hartleben G, Wiech T, Fornoni A, Nelson RG, Kretzler M, Wanke R, Pavenstädt H, Kerjaschki D, Cohen CD, Hall MN, Rüegg MA, Inoki K, Walz G, Huber TB.

J Clin Invest. 2011 Jun 1;121(6):2197-209.

【まとめ】
慢性糸球体疾患は、腎不全や心血管疾患死亡に関連し、重要な健康上の問題になっている。この研究では、糸球体足細胞(podocyte)機能の維持のためには、mTOR活性がコントロールされていることが重要で、mTOR調節障害では糸球体病変が認められることを示す。マウスpodocyteでmTORC1を遺伝的に欠損させると、蛋白尿と進行性糸球体硬化をきたす。さらに、マウスpodocyteからmTORC1とmTORC2の両者を同時に欠損させると糸球体病変が悪化したことから、両方のmTOR complexがpodocyteのホメオスタシスを維持するのに重要であることが分かった。

それに対して、ヒトの糖尿病腎症はmTOR活性亢進を伴っており、早期の糸球体過形成、過剰濾過といった特徴を示す。遺伝的にpodocyteのmTORC1のコピー数を減少させることによって、mTORC1シグナル伝達を抑制したマウスでは、糸球体硬化症が抑制され、糖尿病腎症における糸球体疾患の進行が改善した。これらの結果から、podocyteホメオスタシスのためにはmTOR活性のバランスが取れている必要があり、mTOR阻害はpodocyteを保護し、進行性の糖尿病腎症を予防することが示唆される。
by md345797 | 2011-07-09 23:30 | 糖尿病合併症