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Mir193b-365は褐色脂肪分化に必要である

Mir193b-365 is essential for brown fat differentiation.

Sun L, Xie H, Mori MA, Alexander R, Yuan B, Hattangadi SM, Liu Q, Kahn CR, Lodish HF.

Nat Cell Biol. 2011 Jul 10. Published online.

【まとめ】
最近の研究で、褐色脂肪細胞はin vivoではMyf5陽性筋芽前駆細胞(myoblastic progenitor)から、Prdm16の作用によって分化することが示されている。この研究では、褐色脂肪組織に多いmiRNA(microRNA)クラスターであるMiR-193b-365が、褐色脂肪分化の重要な調節因子であることを明らかにした。miR-193b、miR-365の発現を阻害すると、Runx1t1の発現亢進により褐色脂肪分化が障害され、筋分化マーカーの発現が誘導された。Mir193b、Mir365をC2C12 myoblastに強制発現させると、筋分化プログラムが阻害され、褐色脂肪細胞に分化した。Mir193b-365は、一部はPparαを介して、Prdm16により増加した。これらの結果から、Mir193b-365は褐色脂肪への分化促進および筋分化抑制に必要な調節因子であることが明らかとなった。


【論文内容】
ヒトでは褐色脂肪組織(BAT)の量は最小限しかないと考えられていたが、近年はヒトでもかなりの量のBATがあり機能を有していることが明らかになってきた。マウスでは、BATが欠損すると過食、肥満を呈する。褐色脂肪の特徴であるUcp1蛋白を白色脂肪細胞に過剰発現させると、エネルギー亢進が起こり肥満が防止できる。最近、褐色脂肪細胞はMyf5陽性の筋芽細胞から分化することが明らかになっている。またPrdm16は、褐色脂肪と筋肉への分化のスイッチとなる重要な調節因子で、その過剰発現により褐色脂肪分化を、その欠損により筋分化を誘導することができる。今回その分化決定にMir193b-365クラスターが重要であることが分かった。

マウスWAT、BAT、骨格筋のサンプルからmiRNAアレイを用いて、褐色脂肪分化に特徴的なmiRNAを検索したところ、Mir193b-365が同定された。miR-193b-365の発現を阻害すると、間質血管分画(SVF)細胞からの褐色脂肪分化(脂肪蓄積、Ucp1発現など)が減少した。miR-193bのターゲット検索にてRunx1T1(褐色脂肪細胞分化を阻害)が同定された。miR-193bをレトロウイルスベクターを用いてC2C12筋芽細胞(myoblast)またはヒトprimary myoblastに過剰発現させると、myotubeヘの分化が抑制され、褐色脂肪細胞への分化が促進された。

Prdm16はBATへの分化のmaster regulatorと考えられている。Prdm16をレトロウイルスを用いてC2C12 myoblastに過剰発現させるとmiR-193b とmiR-365は増加し、shRNAを用いて欠損させるとmiR-193b とmiR-365は減少した。Mir193b-365のプロモーター領域のシークエンス解析により、Mir193bの上流にPparα結合部位が存在することが分かった。Pparαは、褐色脂肪選択的な転写因子で、BATにおける筋肉関連蛋白の発現抑制に働いている。Prdm16は、少なくとも一部Pparαを介してMir193b-365増加に働いていることが示された。

【結論】
褐色脂肪組織に特有のmiRNAを検索することにより、褐色脂肪への分化制御の新たな一面が明らかになった。Mir193b-365の動物モデルにおける役割が明らかになれば、褐色脂肪分化機構の更なる解明が進み、肥満や代謝疾患の治療に役立つと思われる。
by md345797 | 2011-07-13 18:50 | エネルギー代謝