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ヒト レジスチン―マウスからヒトへ

Human resistin: found in translation from mouse to man.

Schwartz DR, Lazar MA.

Trends Endocrinol Metab. 2011 Jul;22(7):259-65.

【総説内容】
レジスチンは、マウス脂肪細胞においてチアゾリジン系薬剤によって減少する遺伝子産物をスクリーニングすることによって発見された。げっ歯類モデルでは、肥満ではレジスチンが高値であり、レジスチンを投与または過剰発現させるとインスリン抵抗性になることから、レジスチンはインスリン抵抗性のメディエーターであることが確立している。

レジスチンはヒトでも検出されるが、げっ歯類と違って主にマクロファージに発現し、脂肪組織においても炎症性の非脂肪細胞に存在する。ヒトの単核球では、炎症性刺激によってレジスチンの発現および分泌が増加する。

疫学研究では、アメリカの3つのケース・コントロール研究で、血清レジスチンが高値であると2型糖尿病発症のリスクが高いことが示されている。しかし、レジスチンが糖尿病の原因なのか、それとも代謝障害の結果なのか(an active player or merely a responder in metabolic dysfunction)は不明である。

肥満で非糖尿病のヒトでは、血清レジスチン値と肥満度の間に直接の関連が認められる。また、食事、運動によって体重を減少させるとレジスチン値も減少する。極度の肥満患者がbariatric surgeryを受けると、レジスチン値は低下する。このようにヒトのレジスチンは脂肪細胞由来ではないにも関わらず、肥満と脂肪蓄積(adiposity)との密接なつながりがある。

ヒトにおいてレジスチンは、炎症性疾患(関節リウマチや炎症性腸疾患にも)に伴って増加し、炎症性マーカー(CRP、TNF-α、IL-6)に相関する。

レジスチンは血管内皮細胞や心筋細胞内のシグナル伝達にも影響し、血清レジスチン値はヒトの冠動脈疾患、脳卒中、腎機能障害とも相関する。また、虚血とは独立して、レジスチンは心筋肥大・収縮力低下ももたらし、心不全にも影響する。

当初マウスの脂肪細胞で発見されたレジスチンは、現在ヒトにおいて主にマクロファージ由来の、炎症と代謝疾患をつなぐ重要な因子と考えられている。
by md345797 | 2011-07-18 14:16 | インスリン抵抗性