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2型糖尿病に伴うCKDにおけるバルドキソロンメチルの腎機能に及ぼす効果

Bardoxolone methyl and kidney function in CKD with type 2 diabetes.

Pergola PE, Raskin P, Toto RD, Meyer CJ, Huff JW, Grossman EB, Krauth M, Ruiz S, Audhya P, Christ-Schmidt H, Wittes J, Warnock DG; BEAM Study Investigators.

N Engl J Med. 2011 Jul 28;365(4):327-36.

【まとめ】
2型糖尿病に伴う慢性腎臓病(CKD)は炎症、酸化ストレスがその原因として考えられている。経口アンチオキシダント炎症調節薬(antioxidant inflammation modulator)であるバルドキソロンメチル(bardoxolone methyl)は短期の投与で2型糖尿病に伴うCKDに効果があるとされているが、長期の効果は不明であった。本研究では、227名のCKD (eGFRが20-45 ml/min/1.73m2で定義)に対し、プラセボ、バルドキソロンメチル25、75、150mg/日を投与し、eGFRの変化を24-52週後に比較した。バルドキソロンメチル群は、プラセボ群と比較して 24週の時点での eGFR の平均値が有意に改善した。この改善は 52 週の時点まで持続していたことから、バルドキソロンメチルはCKD 治療に有望であると考えられた。

【論文内容】
2型糖尿病に伴うCKDには慢性炎症および酸化ストレスが関わっており、アンチオキシダント炎症調節薬であるバルドキソロンメチルの短期間(8週間)投与が有効である(eGFRが有意に増加する)ことが知られている。

バルドキソロンメチルは、天然のオレアノール酸の誘導体であり、Keap1-Nrf2経路を活性化することにより、細胞保護的遺伝子の発現を増加させる。この薬物は、内因性のNrf2活性化物質であるシクロペンテノンプロスタグランジンに構造が類似しており、どちらもNFκB経路を抑制し抗炎症作用を発揮すると考えられている。

今回、バルドキソロンメチルの無作為・プラセボ比較の52週間にわたる試験(BEAM study)を行い、2型糖尿病に伴うCKD患者においてこの薬剤のeGFRに及ぼす影響を検討した。

2型糖尿病を伴うCKD (eGFRが20-45ml/min/1.73m2で定義、平均32.4)患者227名(98%がARBまたはACE inhibitor、その両方を服用している)を、1:1:1:1にプラセボ、経口バルドキソロンメチル25、75、150 mg/日投与群にランダムに割り付けた。主要アウトカムは24週後のeGFRの変化、二次アウトカムは52週後の変化とした。

eGFRはバルドキソロンメチル投与4週間後から上昇、12週後にピークとなり、52週まで上昇が持続した。24週の時点では投与各群でeGFRが上昇しており、25 mg投与群と75 mg投与群は有意差があったが、75 mg群と150 mg群では有意差を認めなかった。

24週の時点でバルドキソロンメチル投与群では、プラセボ群に比較してBUN、リン、尿酸、マグネシウムの低下が認められた。24週、52週の時点で、75 mg、150 mg投与群で尿ACR(アルブミン/クレアチニン比)の有意な増加が見られたが、56週ではベースライン値まで低下した。バルドキソロンメチルの副作用は中等度であり、頻度が多かったのは筋肉のspasmで用量依存的に発現した。他には低マグネシウム血症、ALTの増加、胃腸症状などが見られた。

【結論】
2型糖尿病を有する進行CKDの患者で、バルドキソロンメチルによる治療は52週までeGFRの増加を持続させた。バルドキソロンメチルはCKDの有望な治療の候補と考えられる。
by md345797 | 2011-08-01 20:24 | 大規模臨床試験