Deletion of the Mammalian INDY Homolog Mimics Aspects of Dietary Restriction and Protects against Adiposity and Insulin Resistance in Mice.
Birkenfeld AL, Lee HY, Guebre-Egziabher F, Alves TC, Jurczak MJ, Jornayvaz FR, Zhang D, Hsiao JJ, Martin-Montalvo A, Fischer-Rosinsky A, Spranger J, Pfeiffer AF, Jordan J, Fromm MF, König J, Lieske S, Carmean CM, Frederick DW, Weismann D, Knauf F, Irusta PM, De Cabo R, Helfand SL, Samuel VT, Shulman GI.
Cell Metab. 2011 Aug 3;14(2):184-95.
【まとめ】
ショウジョウバエにおける
INDY (
I’m Not Dead, Yet) 遺伝子は、発現が低下すると寿命が延長し、カロリー制限時に見られるようなミトコンドリア生合成の増強が認められる。しかし、その細胞内メカニズムは不明であった。この研究では、哺乳類の
Indyホモログ(
mIndy) の欠損マウスを作製した。
mIndy-/-マウスは、肝でのAMPKが活性化され、PGC-1αが増加、ACC-2が阻害され、SREBP-1cが減少する。これにより、肝のミトコンドリア生合成、脂肪酸化、エネルギー消費が促進され、肝での
de novo脂肪合成が低下する。これにより、高脂肪食または加齢による肥満やインスリン抵抗性が起こりにくい。
mIndyは哺乳類のエネルギー代謝に重要な作用を及ぼしており、2型糖尿病と肥満の治療のターゲットとなりうる。
【論文内容】
ショウジョウバエにおけるIndyは、哺乳類では、Na共役性クエン酸塩トランスポーターNaCTに相当し、主に肝に発現している。この研究ではmIndy-/-マウスを作製し、エネルギー代謝やインスリン感受性に対する役割を検討した。mIndy-/-マウスはmIndy+/+に比べ体重が少なく、高脂肪食負荷しても体重増加は少ない。このマウスは肝において、脂肪酸化および酸素消費が大きく、クエン酸取り込み低下に伴う脂肪合成の低下が認められた。そのため、高脂肪食負荷による脂肪肝の進展が少なく(異所性ジアシルグリセロール蓄積が少ない)、インスリン抵抗性の進展が少ない。
mIndy-/-マウスの肝のマイクロアレイ解析により、ミトコンドリア遺伝子、参加的リン酸化(OXPHOS)遺伝子、電子伝達系(ETC)遺伝子の発現が増加していることが分かった。このマウスでは肝のミトコンドリア濃度が高く、ミトコンドリア生合成を増加させるAMPKのリン酸化、およびAMPKのターゲットである PGC-1αの発現が増加していた。
ショウジョウバエと線虫ではIndyの発現低下により寿命が延長することが知られている。加齢はミトコンドリア機能の低下、異所性脂肪蓄積、インスリン抵抗性などを伴うが、mIndy-/-マウスでは加齢に伴う脂肪の増加やインスリン抵抗性の進展が見られなかった。
ショウジョウバエではIndyの発現低下がカロリー制限の状態に似ていることが分かっている。mIndy-/-マウスとmIndy+/+マウスの全ゲノムマイクロアレイ解析によると、mIndy-/-マウスではカロリー制限マウスのパスウェイと80%が同様であった。また、マウスを絶食にするとmIndyの発現が低下した。
【結論】
マウスにおいてmIndyを欠損させると、高脂肪食下でのまたは加齢に伴う肥満や肝の脂肪蓄積が少なく、インスリン抵抗性が改善される(mIndy-/-マウスでは摂食量は低下していない)。このことは少なくとも一部はAMPK活性化とそれによるミトコンドリア生合成の増加、エネルギー消費の増加によるものである。mIndyは脂肪肝、肥満、2型糖尿病の有望な治療ターゲットと考えられる。