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DPP4は肥満とメタボリックシンドロームをつなぐ新規アディポカインである

Dipeptidyl peptidase 4 is a novel adipokine potentially linking obesity to the metabolic syndrome.

Lamers D, Famulla S, Wronkowitz N, Hartwig S, Lehr S, Ouwens DM, Eckardt K, Kaufman JM, Ryden M, Müller S, Hanisch FG, Ruige J, Arner P, Sell H, Eckel J.

Diabetes. 2011 Jul;60(7):1917-25.

【まとめ】
ヒト脂肪細胞の分泌蛋白(adipocyte secretome)のプロテオーム解析により、DPP4が新しいアディポカインであることが明らかになった。本研究では、DPP4のアディポカインとしての作用とメタボリックシンドロームとの関連を検討した。ヒトの脂肪細胞を十分に分化させるとDPP4を放出した。DPP4を脂肪細胞または骨格筋、平滑筋細胞に添加すると、インスリンシグナル伝達が障害された。肥満者では皮下脂肪に比べ腹腔内脂肪からのDPP4放出が多かったが、このような差は正常者では認めなかった。血清DPP4値は脂肪細胞の大きさに相関した。肥満者、正常者から脂肪組織を取り出した場合、脂肪量とメタボリックシンドロームの数値と相関するDPP4放出が認められ、これは体重の減量に伴って減少した。脂肪細胞からのDPP4放出は、メタボリックシンドロームのリスクスコアの増加に相関して上昇した。これらのことから、DPP4はautocrine/paracrineによってインスリン感受性を障害するアディポカインであり、脂肪細胞とメタボリックシンドロームを関連付ける因子と考えられる。

【論文内容】
DPP4は脂肪細胞から放出され、脂肪・筋でインスリンシグナル伝達を障害する

DPP4は、ubiquitousに発現する膜貫通糖蛋白であり、GLP-1・GIPなどのN端の2つのペプチドを切断する酵素である。DPP4が膜貫通部分から切断された可溶性のフォーム(soluble DPP4)が多く血漿中に存在するが、それがどこから産生されているかは不明であった。ヒト脂肪細胞の分泌蛋白のプロテオーム解析により、DPP4が新規アディポカインであることが同定された。ヒト脂肪細胞を分化させると、分化に伴ってDPP4の発現・放出が増加した。Soluble DPP4をヒト脂肪細胞および骨格筋細胞、平滑筋細胞に添加すると濃度依存的にインスリンによるAktリン酸化が低下、この低下はDPP4阻害剤(K579)によってブロックされた。

血清DPP4値は肥満で増加する
肥満者では正常者に比べ血清DPP4濃度が高値であり、脂肪組織生検によると内臓脂肪でのDPP4発現が皮下脂肪に比べて有意に高かった。正常者ではそのような差はなかった。DPP4値はBMI、脂肪細胞の大きさ、インスリン、レプチンと正の相関を示し、年齢、アディポネクチンと負の相関を示した。

脂肪組織からのDPP4放出は脂肪細胞の大きさおよびメタボリックシンドロームの有無に相関する
皮下脂肪からの培養脂肪組織片(explant)の検討によると、肥満者の脂肪細胞は正常者に比べ有意に大きいが、外科的に減量した場合脂肪細胞は小さくなり、DPP4の放出も正常者レベルに低下する。この際に脂肪組織の組織片からのDPP4放出はBMI、ウェスト周囲、TG、HOMAなどと正に相関し、HDL-Cと負に相関する。また、DPP4値および組織片からのDPP4放出はメタボリックシンドローム(リスクスコア3以上)があると有意に大きくなった。

【結論】
DPP4は脂肪細胞から放出(=膜蛋白が切断されてsoluble DPP4が産生されるので分泌secreteでなくrelease)される新規アディポカインである。Soluble DPP4は(脂肪細胞に対して)autocrineおよび(骨格筋・平滑筋に対して)paracrineに作用しインスリンシグナル伝達を障害する。血清DPPはがんや喘息、C型肝炎などのさまざまな疾患によって変動することが知られていたが、今回肥満およびメタボリックシンドロームに伴って増加することが初めて明らかになった。
by md345797 | 2011-08-12 17:24 | インスリン抵抗性