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β細胞生物学、インスリン抵抗性、糖尿病合併症におけるmicroRNA

MicroRNAs in β-Cell Biology, Insulin Resistance, Diabetes and Its Complications.

Fernandez-Valverde SL, Taft RJ, Mattick JS.

Diabetes. 2011 Jul;60(7):1825-31.

【総説内容】
β細胞生物学におけるmiRNAs

2型糖尿病におけるmiRNAの役割は、2004年にmiR-375がインスリン分泌調節に直接作用していることが明らかになって以来次々と分かってきた。miR-375の増加は、その標的であるMtpn(注:myotrophin、アクチンの脱重合に関与し、分泌顆粒の融合を起こす)の抑制を起こし、インスリン分泌の低下をもたらす。ただし、miR-375を欠損させるとob/obマウスでβ細胞量が減少しインスリン分泌不全に陥ることも報告されている。さらに、miR-9はSYTL4(granulophilin)の発現を抑制して、インスリン分泌を促進する。miR-124aはFoxa2を標的としてインスリンの発現を抑制する。

肥満と脂肪組織におけるmiRNAs
肥満に伴い脂肪組織でもmiRNAの調節異常が見られる。例えばmiR-29は高血糖によって誘導され、miR-320はインスリン抵抗性を改善する。これらはp85を標的にしており、Aktのリン酸化に関与する。miR-27bはPPARγを標的にしている。また、miR-143は脂肪分化を低下させ、miR-103とmiR-107は脂肪分化を促進する。
(注:肥満によるmiRNA-143の発現亢進は、インスリン刺激によるAKT活性化を阻害し、糖代謝を障害するMir-103/107はインスリン感受性を負に調節する

糖尿病合併症におけるmiRNAs
2型糖尿病患者の筋では、miR-133aおよびmiR-1の抑制が低下している。これらのmiRNAは心機能および心臓発生に重要なため、高血糖に伴う心肥大の発生に関与していると考えられる。STZ糖尿病マウスの肝ではmiR-122の低下に伴い、肝の脂肪酸およびコレステロール合成が低下している。糖尿病の腎では、(高血糖によって誘導される)TGF-βシグナルがmiR-192発現増加をもたらし、PTENを標的として低下させることによってAkt活性の増加をもたらしている(注:これにより基底膜の肥厚・メサンギウム基質の増加が起こる)。また、血管内皮では、miR-126の発現と糖尿病血管合併症の発症に強い負の相関が認められる。このmiRNAの導入によって食事性の動脈硬化を抑制できることが示されており、miR-126は血管合併症の診断マーカーになるとともに動脈硬化の治療ターゲットと考えられている。
by md345797 | 2011-08-13 08:29 | 糖尿病の病態生理