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慢性腎臓病

Chronic kidney disease.

Levey AS, Coresh J.

Lancet. Aug 15 online publication.

【総説内容】
慢性腎臓病(CKD)とは、腎の構造と機能に関する不均一(heterogeneous)な疾患を表す用語である。2002年の米国ガイドラインでは、世界的な公衆衛生問題として、早期には一般内科医が管理するものという認識が高められた。CKDの管理は、GFRとアルブミン尿によるステージに基づいた分類に従って行われる。CKDはルーチンの検査で発見でき、進行を遅らせ、心血管疾患のリスクを減らしQOLを改善する治療が可能である。

概念的なモデル・定義・転帰
CKDの概念的なモデルは、正常→高リスク→腎障害→GFR低下→腎不全→死へと進行するもので、各段階から合併症にいたる危険がある。CKDの定義は、現在の腎障害(アルブミン尿)または腎機能低下(GFRが60ml/min/1.73m2未満)が3か月以上続くことである。CKDは、GFRに基づいて5つのステージに分けられる(GFR 90以上=stage1、60-89=stage2、30-59=stage3、15-29=stage4、15未満=stage5)。腎不全はCKDの最も重篤な転帰であり、GFR 15未満と定義される。

CKDの原因
先進国では、CKDは加齢、糖尿病、高血圧、肥満、心血管疾患などが関連しており、原因疾患としては糖尿病性腎硬化症、高血圧性腎硬化症がある。発展途上国では、感染や薬剤・毒物が原因の糸球体疾患・尿管間質疾患が多い。

CKDの発見と診断
CKD発見と診断のためには、5つのステップがある。① CKDのハイリスク(加齢、家族歴、急性腎障害の既往、心血管疾患およびそのリスク、自己免疫疾患、感染、薬剤など)を認識する、②血清クレアチニンの測定とGFRの推定、③GFRが60未満、または腎障害が3か月以上続いていれば CKDと判断、④糖尿病性の腎疾患か、そうでないか(糸球体疾患、血管疾患、腎移植後など)、⑤GFRによるステージングを行う。

CKDの管理
CKDの進行を遅らせ、アルブミン尿を減少させる:

40歳以降では通常、GFRが毎年0.75-1.00減少する。アルブミン尿、糖尿病、高血圧がある人はこの速度が速い。この進行を遅らせるのに最も推奨されるのは、 ACE阻害薬とARBの使用である。これらはアルブミン尿減少にも効果を示す。また、強化血糖コントロールは糖尿病腎症の進展遅延に有効である。

GFR低下による合併症を予防する:
薬剤の濃度の異常、細胞外液不足、造影剤の使用など、医療上の原因でGFRが低下することがある(NSAIDsやヨード造影剤による急性腎障害(AKI)など)。
尿毒症(uremia)は当初は無症状であるが、GFRの低下に伴い高血圧、貧血、副甲状腺機能亢進症、高リン血症、低Ca血症、アシドーシスなどをきたし、それぞれの治療が必要となる。また、ネフローゼ症候群は糸球体疾患の主要な症状の一つであり、ACE阻害薬・ARBによる尿蛋白の減少、塩分制限、浮腫のための利尿剤の投与などが必要となる。

問題点と今後の課題
加齢と血管疾患がGFRの低下に大きく関与するため、現在の定義ではCKDを過剰診断してしまうことが問われている。また、CKDの転帰を改善する大規模臨床試験が少ないことも、新規治療を臨床に導入する上で問題になっている。
by md345797 | 2011-08-16 08:13 | 腎高血圧