Minimum amount of physical activity for reduced mortality and extended life expectancy: a prospective cohort study.
Wen CP, Wai JPM, Tsai MK, Yang YC, Cheng TYD, Lee M-C, Chan HT, Tsao CK, Tsai SP, Wu X.
Lancet. Aug 16 online publication.
【まとめ】
余暇時間の身体活動(leisure-time physical activity: LTPA)が健康に良いことは知られているが、以前から推奨されている週150分より短い運動が、平均余命に好影響を与えるかどうかは不明であった。台湾の前向きコホート研究416,175名を平均8.05年追跡し、1週間の運動量に基づき5つのカテゴリー(非活動、低活動量、中程度活動量、高活動量、非常に高度な活動量)に分類し死亡リスクと平均余命を算出した。非活動グループと比較すると、低活動量グループ(1日15分の運動)では、すべての死因による死亡が14%減少し、平均余命が3年延長した。これに1日15分の運動を追加していくと、総死亡率は4%ずつ低下した。この結果は、年齢、性別、心血管疾患リスクの有無にかかわらず当てはまった。以上より、1日15分(1週間で90分)の中等度強度の身体活動は、心血管疾患のリスクがある人にも好影響をもたらすことが明らかになった。
【論文内容】
週150分(1日30分、週5日)以上のLTPAが健康に好影響を与えることが、WHOのガイドラインなどで推奨されている。アメリカ成人の1/3がこの推奨に従っているが、中国、日本、台湾などの東アジア諸国ではその数は1/5程度とされている。本研究では死亡率を減少させるための最低限の身体活動量について、台湾のコホートを用いて検討した。
416,175名の20歳以上の男女を質問票により、身体活動量(MET-h/週)により、「非活動inactive」、「低活動量low-volume=1日15分週6日の3.75-7.49MET-hの運動」「推奨に見合う活動量=1日30分週5日以上の運動(これを中等度medium、高度high、非常に高度very high-volumeに分けた)」に分類した(2008 physical activity guidelines for Americansに基づく分類)。
非活動グループは、低活動量グループに比べて総死亡率(all-cause mortality)が17%高く、がんの死亡率(all-cancer mortality)が11%高かった。総死亡率は身体活動とdose-responseの関係が認められ、非常に高度な活動量のグループが最も死亡率が少なかった。総死亡率低下と1日の身体運動時間をグラフにすると、1日15分の運動で14%の総死亡率低下が見られ、さらに15分増やすごとに4%の総死亡率低下が認められた。
性別・年齢・心血管疾患リスクによるサブグループでの比較を行っても、低活動量グループは非活動グループに比べて総死亡率が低かった。身体活動の強度は、活発な強度(vigorous-intensity)は、中等度強度(moderate-intensity)に比べ同じかそれ以上、総死亡率低下が認められた。
30歳における平均余命は、非活動グループに比べ低活動量グループでは男性で2.55年、女性で3.10年延長した。推奨に見合う量の身体活動を行ったグループでは、4.21年(男性)、3.67年(女性)の平均余命延長が認められた。
【結論】
1日15分の中等度強度の身体活動を行う人は、非活動性の人に比べ、健康への好影響(総死亡率の14%低下、がん死亡率の10%低下、平均余命の3年程度延長)が認められた。この低活動量の身体運動の重要性を広めることは、世界のnon-communicable disease(がんや心血管疾患など非感染症疾患)との戦いに重要な役割を果たすと考えられる。