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14-3-3蛋白のリン酸化蛋白への結合はインスリン作用を調節する

The capture of phosphoproteins by 14-3-3 proteins mediates actions of insulin.

Chen S, Synowsky S, Tinti M, Mackintosh C.

Trends Endocrinol Metab. 2011 Nov;22(11):429-36. Epub 2011 Aug 24.

【総説内容】
インスリンがチロシンキナーゼ受容体に結合して作用を発揮するまでの経路は、PI 3K-PKB(AKT)-mTORC1-p70S6KとRas-Raf-ERK-p90RSKがよく知られている。この総説では、14-3-3というリン酸化蛋白結合蛋白がインスリンの糖恒常性維持作用にどのように影響しているかを述べる。

14-3-3は特定のリン酸化部位のペアに結合する
14-3-3はダイマーを形成しており、2つのリン酸化残基を結合させるが、しばしば一つの標的蛋白の縦列に並んだリン酸化部位にドッキングする。これは、デジタル電子回路における論理ゲートの役割を果たし、2つの入力から1つの出力を出す際のORやANDに相当する。例えば、BAD(BCL-XL/BCL-2-associated death promoter)に結合する14-3-3はORゲートの役割を果たしている(BADの2つあるリン酸化部位のどちらか一方がリン酸化されていれば14-3-3が結合し、抗アポトーシス作用のあるBCL-XLの結合を防ぐため)。もし2つあるリン酸化部位の両方がリン酸化されたところに14-3-3が結合する場合は、ANDゲートの役割を果たす。2つのリン酸化とその部位への14-3-3の結合は蛋白によって異なるため、論理回路がよりfuzzyになる。

14-3-3は標的蛋白の2つのリン酸化部位に結合して、「てこ」とその支点の役割を果たしたり(例:RGS3を活性化する場合)、標的蛋白のリン酸化をマスクしたり(例:PKBによってリン酸化されたFOXO4に結合し、核への局在を防ぎ転写活性化を阻害する場合)する。また、機能的ドメインを外側に向けるクリップの役割を果たすこともある(例:IRS2、PRAS40, rictorに結合する場合)。

AS160とTBC1D1の調節
また、14-3-3はRab GTPase activating proteinsであるAS160とTBC1D1結合し、GLUT4の細胞膜への移行を起こし、筋肉の糖取り込みに作用する。AS160はAKTの基質であり、GLUT4の移行に重要である。インスリンによるGLUT4小胞の膜への融合は、AS160と14-3-3の結合をブロックすると阻害される。一方で、TBC1D1は、2つあるリン酸化部位のうち1つがAMPKによってリン酸化される。これらの蛋白の重要性を検討するためには、AS160とTBC1D1の14-3-3結合部位のknock-in mutationを持つマウスを作製する必要がある。既報の、AS160のThr649(14-3-3結合部位)をAlaに置換したknock-inマウスでは、変異AS160に14-3-3が結合せず、GLUT4の移行が正常に起きなくなり、耐糖能異常をきたす。

14-3-3結合蛋白のプロテオミクス
蛋白への14-3-3の結合はインスリンによって動的に調節されているが、これはプロテオーム解析によって定量可能である。例えば、14-3-3のaffinity captureを用いて、2-3種類の条件下での細胞のlysateから14-3-3結合蛋白を単離することができる。また、SIRAC(stable isotope labeling using amino acids in cell culture:細胞培養液中のアミノ酸を用いた安定同位体ラベル)を用いて発現量の変化した蛋白の同定・定量を質量分析法(MS)で 網羅的に解析することができる。これらの方法により、インスリンシグナル伝達の新たな調節機構が解明されつつある。
by md345797 | 2011-08-31 16:52 | インスリン抵抗性