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南アジア系統のヒトのゲノムワイド関連解析により、新たな6つの2型糖尿病感受性遺伝子座が同定された

Genome-wide association study in individuals of South Asian ancestry identifies six new type 2 diabetes susceptibility loci.

Kooner JS, Saleheen D, Sim X, Sehmi J, Zhang W, Frossard P, Been LF, Chia KS, Dimas AS, Hassanali N, Jafar T, Jowett JB, Li X, Radha V, Rees SD, Takeuchi F, Young R, Aung T, Basit A, Chidambaram M, Das D, Grunberg E, Hedman AK, Hydrie ZI, Islam M, Khor CC, Kowlessur S, Kristensen MM, Liju S, Lim WY, Matthews DR, Liu J, Morris AP, Nica AC, Pinidiyapathirage JM, Prokopenko I, Rasheed A, Samuel M, Shah N, Shera AS, Small KS, Suo C, Wickremasinghe AR, Wong TY, Yang M, Zhang F; DIAGRAM; MuTHER, Abecasis GR, Barnett AH, Caulfield M, Deloukas P, Frayling TM, Froguel P, Kato N, Katulanda P, Kelly MA, Liang J, Mohan V, Sanghera DK, Scott J, Seielstad M, Zimmet PZ, Elliott P, Teo YY, McCarthy MI, Danesh J, Tai ES, Chambers JC.

Nat Genet. 43, 984–989, 2011.

【まとめ】
南アジア系統の2型糖尿病5,561名とコントロール14,458名を対象にゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。その結果、2型糖尿病に関連する20のSNPsと、2型糖尿病で遺伝子変異を持つ新しい6つの遺伝子座(GRB14, ST6GAL1, VPS26A, HMG20A, AP3S2, HNF4A)を同定した。GRB14のSNPsはインスリン感受性に関連し、ST6GAL1およびHNF4AのSNPsは膵β細胞機能に関連していた。これらの結果は、南アジア人における2型糖尿病の遺伝的メカニズムの解明に役立つと思われる。

【論文内容】
南アジア系統のヒトはヨーロッパ人に比べ2型糖尿病のリスクが4倍高いとされており、2030年には世界の全糖尿病患者の4分の1である8000万人を南アジア人が占めると予想されている。現在までにGWASによって42の遺伝子が2型糖尿病感受性に関連があることが明らかになっている。これらの多くはヨーロッパ系が対象であるが、この研究では、ロンドン・パキスタン・シンガポールの2型糖尿病南アジア人5,561名とコントロールの南アジア人14,458名を対象にGWASを行った。その結果、2型糖尿病リスクの遺伝子座としてよく知られたTCF7L2のSNP(rs7903146)が有意であった。そのほかに6つのSNPsが次の遺伝子座に認められた(GRB14, ST6GAL1, VPS26A, HMG20A, AP3S2, HNF4A)。

GRB14近傍のrs3923113は2型糖尿病と強い相関を示していたが、GRB14はインスリン受容体のアダプター蛋白としてチロシンキナーゼシグナルの阻害を起こすことが知られている。Grb14-/-マウスはインスリン感受性が亢進している。rs3923113のリスクアリールは南アジア人でインスリン感受性が低下しており、GRB14の機能亢進型の変異(gain of function)を呈していると考えられる。ST6GAL1は、ゴルジ装置に局在する酵素をエンコードしており、細胞表面のtraffickingやインスリン作用に関連している可能性がある。VPS26Aはエンドソームからトランスゴルジネットワークへの蛋白輸送に関わる蛋白をエンコードしており、膵や脂肪組織に発現している。HNF4Aは肝に強く発現する核内転写因子で、その変異はMODY(maturity-onset diabetes of the young)のtype 1として知られる。HNF4Aのイントロン中のrs4812829のリスクアリールは南アジア人において、膵β細胞機能低下と関連した。

【結論】
GWASにより、南アジア人で初めて2型糖尿病と関連する遺伝子座を明らかにした。今回の解析で6つの新しい遺伝子座が2型糖尿病に関連していることが分かった。
by md345797 | 2011-09-01 17:16 | 糖尿病の遺伝学