Modification of mineralocorticoid receptor function by Rac1 GTPase: implication in proteinuric kidney disease.
Shibata S, Nagase M, Yoshida S, Kawarazaki W, Kurihara H, Tanaka H, Miyoshi J, Takai Y, Fujita T.
Nat Med. 2008 Dec;14(12):1370-6.
【まとめ】
ミネラロコルチコイド受容体(MR)の阻害によって、蛋白尿を伴う腎臓病の転帰が改善することが示されている。しかし、腎臓病におけるMR依存的な転写活性の調節機構についてはほとんど知られていない。この研究では、Rac1(低分子量G蛋白Rhoファミリーに属する)が、MRシグナルの強力な活性化因子として働くという新しい役割を明らかにした。
HEK293細胞に恒常活性型(CA-Rac1)を過剰発現させると、MRのレポーター活性が亢進した。CA-Rac1は、糸球体上皮細胞(podocyte)でもMRの核への集積を促進した。さらに、
Arhgdia-/-マウス(Rho GDP解離抑制因子α欠損マウス)では、大量のアルブミン尿やpodocyteの障害を伴う腎機能障害が認められる。このマウスのアルドステロン濃度は正常であるが、腎臓でRac1活性とMRシグナルの増加が認められた。このマウスのMRの過剰な活性化と腎障害は、Rac特異的な低分子阻害剤によって軽減された。さらに、
Arhgdia-/-マウスのアルブミン尿と組織学的変化はMRの阻害によって抑制されたことから、Rac1-MRの病的な役割が確認された。これらの結果から、Rac1とMRのシグナルクロストークがMR活性を修飾することが明らかになり、Rac1は慢性腎臓病(CKD)の治療標的になることが示された。
【論文内容】
MRの活性はそのリガンド(アルドステロン)以外にも影響されることが知られていたが、そのtransactivationの機構は不明であった。そこで、Rho GTPaseがMRの機能に及ぼす影響を検討するため、HEK293細胞に恒常活性型Rac1(CA-Rac1)を発現させたところ、アルドステロンなしでもMR受容体の転写活性を促進することが示された。
次に、Rho GTPaseを不活性のままにしておくRho GDP dissociation inhibitorに注目し、疾患モデルとして
Arhgdia(Alpaca Rho GDP dissociation inhibitor (GDI) alpha)欠損マウスについて検討した。このマウスでは、(Rac1を不活性にする機構が欠損しているため)アルドステロンが正常にもかかわらず、MR活性が増加し、蛋白尿と腎障害が認められる。
この
Arhgdia-/-マウスに、Rac特異的な阻害薬であるNSC23766を投与すると、腎のRac1活性が低下、MRシグナルも低下し、蛋白尿と腎機能は改善した。
最後に
Arhgdia-/-マウスにMRの選択的アンタゴニストであるeplerenoneを投与したところ、このマウスの蛋白尿はほぼ消失した。また、電顕像でも腎硬化症は改善した。(NSC23766では蛋白尿が部分的に改善し、eplerenoneではほぼ完全に消失した理由として、NSC23766がRac1を完全には阻害しない可能性、またはRac1がMRを活性化する経路以外にもMR活性系が在る可能性、などが考えられる。)
本研究で、small GTPaseであるRac1のMRの調節因子という新しい役割が明らかになった。また、in vivoでRac1を阻害することが腎機能に好影響を与えることを初めて示した。