Alternatively activated macrophages produce catecholamines to sustain adaptive thermogenesis.
Nguyen KD, Qiu Y, Cui X, Goh YP, Mwangi J, David T, Mukundan L, Brombacher F, Locksley RM, Chawla A.
Nature. 480,104–108, Published online, Nov 20, 2011.
【まとめ】
すべての恒温動物は、寒冷環境の中でも細胞・生理機能を継続するため、体温維持のための熱産生を行っている。視床下部が低温を感知すると、交感神経活性化を介して、褐色および白色脂肪組織(BATおよびWAT)にノルアドレナリンが放出される。これがβ3アドレナリン受容体を活性化し、ノルアドレナリンはWATで脂肪分解を起こすと同時に、BATで熱産生遺伝子(PPARγ-coactivator1a(Ppargc1a)、Ucp1、Acsl1)の活性化を起こす。
この研究では、マウスにおいて、IL-4刺激による
alternativeなマクロファージの活性化がこの適応熱産生(adaptive thermogenesis)に必要であるという予期しなかった結果を報告している。低温に曝露されると、脂肪組織マクロファージのalternativeな活性化が急速に促進されて、カテコラミンが分泌され、これがWATでの脂肪分解、BATでの熱産生遺伝子発現を惹き起こす。マクロファージのalternativeな活性化がないと寒冷に対する代謝適応が障害されるが、IL-4の投与によって、熱産生遺伝子発現、脂肪酸の遊離、エネルギー消費などがマクロファージを介して増加する。今回の研究で、寒冷に対する反応という哺乳類の重要なストレス反応が、alternatively activated macrophageによって起こることが明らかになった。
【論文内容】
マウスを30℃で飼育すると適応熱産生は必要ないが、それ以下の冷環境で飼育すると、体温維持のためBATによる熱産生が起きる。そこで、30℃と22℃(通常飼育温度)および4℃にマウスをおいた時のBATとWATのマクロファージの状態を比較した。低温に曝露した場合のBATとWATでalternative activationのmRNA、例えば Arg1(Arginase 1)、Mrc1(CD206)、Clec10a(CD301)の発現が増加した。それに対し、classical activationマーカーの発現の変化はなかった。フローサイトメトリーでも、同様の結果が得られた。ここで、IL-4/IL-13シグナルを欠損させたIl4-/-/Il13-/-およびStat6-/-マウスでは、寒冷刺激によるマクロファージのalternative activation(Arg1、CD206、CD301の発現)が起きない。
WTマウスに比べ、Il4-/-/Il13-/-およびStat6-/-マウスは、4℃においたときに体温の急激な低下をきたす。WTマウスでは、BATにおいて熱産生遺伝子(Ppargc1a、Ucp1)およびβ酸化遺伝子(Acox1、Acsl1)の発現増加が起きるが、Il4-/-/Il13-/-およびStat6-/-マウスではこの発現増加が減少している。IL-4/IL-13シグナルを骨髄細胞で欠損させたマウス(Il4raLoxP/LoxP LysmCre mice=マクロファージのみでIL-4シグナルが欠損しているマウス)を作製したところ、22℃と4℃でalternative activationが障害されていて、寒冷刺激による熱産生遺伝子(Ucp1、Acox1、 Acsl1、Ppargc1a)の発現が障害されていた。第2のモデルとして、clodronate(ビスフォスフォネートの一種)を含むリポソームを用いて、組織からマクロファージを薬理学的に取り除いたマウスモデルを作製した。このマウスでも、寒冷刺激による熱産生の障害が認められた。
寒冷刺激により、WATにおけるβアドレナリンシグナルが遊離脂肪酸の放出を促進し、その脂肪酸がBATで非共役呼吸(uncoupled respiration)の燃料になる。寒冷刺激では、WATマクロファージのalternative activationも障害されるため、遊離脂肪酸の放出も障害されているかを検討した。実際Il4-/-/Il13-/-マウスおよびStat6-/-マウスでは血中遊離脂肪酸が75%減少していた(Il4raLoxP/LoxPLysmCreマウスでも60%減少していた)。それに伴い、これらのマウスではBAT組織像において脂肪蓄積が減少していた。
次にin vitroで、分化した3T3-L1細胞を用いて、alternatively activated macrophageが脂肪分解を行う際に何の因子が放出されるのかを検討した。Alternatively activated macrophageから採取したconditioned mediumを脂肪細胞に添加すると、perilipinおよびHSLのリン酸化が起きる。これに伴いトリグリセリドの脂肪分解が増加(グリセロール放出の増加)が起こる。これらはStat6-/-マクロファージを用いた場合には起こらなかった。したがって、alternatively activated macrophageは、WATから動員した遊離脂肪酸をBATでの熱産生に用いる調節をしていると考えられる。
では上記の過程で、WAT/BATのマクロファージは、カテコラミン放出源として重要なのか?カテコラミン合成の律速酵素(tyrosine hydroxylase, Th)はマクロファージをIL-4刺激すると発現が誘導されるが、Stat6-/-マウスではIL-4によるThの誘導が起きなかった。さらに、脂肪組織マクロファージにおけるカテコラミン合成について検討した。低温刺激によりThの発現は増加し、IL-4/IL-13シグナル欠損マウスではThの発現とノルアドレナリン量が低下していた。
では、β3アドレナリン受容体アゴニスト(CL-316243)がIl4-/-/Il13-/-マウスの熱産生障害をresucueできるか検討した。このマウスにCL-316243を注入すると、体幹温度が上昇し、熱産生遺伝子発現が増加した。また、BATの脂肪滴の量も正常化した。
さらに、IL-4の急性投与により、マクロファージ依存性に酸素消費が上昇するかを検討した。コントロールマウスではIL-4は急速に酸素消費が増加したのに対し、Il4raLoxP/LoxP LysmCreマウスでは増加しなかった。したがって、BAT/WATにおけるalternatively activated macrophageが適応熱産生を調節していることが示された。
【結論】
Alternatively activated macrophagesはin vivoで熱産生を調節している。IL-4はマクロファージ依存性に(マクロファージを刺激することによって)、エネルギー消費を増加させる。さらに、alternatively activated macrophagesによるノルアドレナリン分泌が寒冷ストレスに対する生体反応を調節していることも明らかになった。交感神経に加えて、造血システム(その中でもalternatively activated macrophages)は第2の(非ふるえ)熱産生の調節回路を形成していると考えられる。