Meta-analysis of genome-wide association studies identifies eight new loci for type 2 diabetes in east Asians.
Cho YS, Chen C-H, Hu C, Long J, Ong RTH, Sim X, Takeuchi F, Wu Y, Go MJ, Yamauchi T, Chang Y-C, Kwak SH, Ma RCW, Yamamoto K, et al.
Nat Genet. 44, 67–72, 2012.
【まとめ】
東アジア人の2型糖尿病(T2D)の感受性遺伝子座を同定するため、3段階の遺伝子解析を行った。Stage 1のT2Dのゲノムワイド関連研究(GWAS)8研究のメタアナリシス (T2Dを持つ6,952 casesと11,865 controls)に続き、stage 2 の
in silico replication解析(5,843 casesと4,574 controls)およびstage 3の
de novo replication 解析(12,284 casesと13,172 controls)を行った。以上の解析により、8個の新しいT2D遺伝子座が明らかになり、それらは、
GLIS3、
PEPD、
FITM2-R3HDML-HNF4A、
KCNK16、
MAEA、
GCC1-PAX4、
PSMD6 および
ZFAND3の中または近傍に位置した。
GLIS3は膵β細胞の発生とインスリン遺伝子発現に関わっており、空腹時血糖値に関連があることが知られている。
PEPD、
HNF4AとT2Dとの関連は以前から知られていた。
KCNK16は膵のグルコース応答性インスリン分泌を制御している可能性がある。東アジア人におけるこれらの結果は、T2Dの病因解明に新しい知見をもたらすものである。
【論文内容】
東アジア人は、欧州人と比べ低いBMIでも高率に2型糖尿病(T2D)を発症することが知られており、T2D発症の病態が欧州人と異なる可能性がある。この研究では、東アジア人での新たなT2Dの遺伝子座を発見するため、3段階の関連解析を行い、8個の遺伝子座を発見した。
その一つ目は、膵β細胞に多く発現する
GLIS3のイントロン内に位置する。この遺伝子産物は、Krüppel-like zinc finger transcription factorであり、膵β細胞発生とインスリン遺伝子発現を調節しており、1型糖尿病や空腹時血糖にも関連がある。2つ目の遺伝子座は、
PEPDのイントロンに位置し、3つ目は
FITM2-R3HDML-HNF4Aの近傍にある。
FITM2は脂肪滴蓄積に関与し、
HNF4Aの変異はMODY1型として知られている。他の5つの遺伝子座は
KCNK16、
MAEA、
GCC1-PAX4、
PSMD6 および
ZFAND3の中または近傍にあり、これらは今までに代謝に関する遺伝形質との関連が知られていなかったものである。
KCNK16は主に膵に発現し、pore-forming Pドメインを含むKチャネルをエンコードする。
MAEAは赤芽球の除核およびマクロファージ成熟に関与している。
GCG1はトランスGolgiネットワークの形成に、
PAX4は膵島発生にそれぞれ関与している。PSMD6はおそらくユビキチン化した蛋白の分解に関わっており、
ZFAND3の役割は不明だが、同じ遺伝子ファミリーの
ZFAND6はT2D遺伝子座であることが知られている。
この研究は、東アジア人のT2Dに対して行った、過去最大のGWASメタアナリシスである。この研究により、新たな生物学的なパスウェイが見出されただけでなく、集団特異的なT2Dの遺伝子座が明らかになったことも重要である。例えば、
ZFAND3のrs9470794とT2Dとの関連は東アジア人特有である一方で、
ZFAND6近傍のrs11634397とT2Dとの関連は欧州人特異的のようである。このことは、広義のA20ドメインを含むzinc finger proteinファミリーが糖尿病の成因に関わっていることを推測させる。このように、上記の知見はそれぞれの集団における糖尿病の形質(アジア人では低いBMIで効率の糖尿病が見られることなど)を理解するのに役立つ可能性がある。