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FGF21の作用と役割

FGF21 reloaded: challenges of a rapidly growing field.

Kharitonenkov A, Larsen P.

Trends Endocrinol Metab. 2011 Mar;22(3):81-6.

【総説内容】
Fibroblast growth factor 21(FGF21)はgrowth factorではない

FGF21は他のFGFsと10-30%の相同性を持ってはいるが、成長を促進する作用はなく「growth factor」としての活性はない。FGF21は、FGFsの中ではFGF19やFGF23を含む、いわゆる「ホルモン様」のサブグループに含まれる。このサブグループは内分泌作用を示し、それぞれ糖・脂質代謝(FGF21)やコレステロール・胆汁酸合成(FGF19)、リン・vitaminD調節(FGF23)に関与している。

FGF21はどこに発現しているか?
FGF21は当初はマウスの肝でクローニングされたが、脂肪や筋でも発現が認められ、その後、膵(外分泌腺とβ細胞)で強い発現が確認された。このことからin vivoでのFGF21の主要な産生源は膵であるように思われたが、膵での発現調節のメカニズムはいまだ検討中の段階である。

FGF21の標的組織は何か?
FGF21の標的組織は当初脂肪組織と考えられていたが、それだけではないことが分かっている。例えば、FGF21は、単離膵島やINS-1細胞を刺激してグルコースによるインスリン産生・グルカゴン抑制を促進したり、マウスや霊長類に投与することでβ細胞量や機能を維持したりする作用がある(ただし後者はインスリン抵抗性・糖毒性改善を介する間接的な作用の可能性もある)。また、肝細胞に直接作用するとする報告もある。現在は、肝・膵・脂肪組織がFGF21の主要な標的組織と考えられており、これはFGF受容体のco-receptorである膜貫通型βKlotho(KLB)の発現臓器とも一致する。

FGF21受容体はどのようなものか?
FGF21は古典的なFGFsと違ってFGF受容体(FGFR)と直接結合せず、FGF21の作用には膜貫通型KLBが必要である。FGF21受容体はFGFRとKLBから成り、KLBはFGFがFGFRと結合するために必要なアダプター蛋白の役割を果たしている。FGFRには4種類ありFGFR1がFGF21の受容体を構成していると考えられている(ただし、そうでないことを示す報告もある)。

FGF21は内分泌因子か?
FGF21は主に肝で産生され、脂肪組織を標的臓器としていると考えられてきたため、肝から脂肪組織へとシグナルを伝達する内分泌因子のように思われているが、活性型のFGF21が血中に存在するかは不明である。現在のELISAキットによる測定では、非活性もしくは阻害型のFGF21が存在している可能性もある。FGF21が真にホルモンとして作用しているか、局所的に働く分子なのかという問題はまだ分かっていない。

FGF21の生理的役割は何か?
FGF21の役割は、飢餓に対する適応とも考えられている。空腹に反応して肝の脂質代謝が亢進、またケトン体が産生されると、FGF21が放出され、全身のインスリン感受性が亢進する。Ketogenic diet(低炭水化物、高蛋白食)で血中FGF21が増加するため、FGF21は飢餓に対するホルモンと言えるかもしれない。

In vivoでのFGF21作用メカニズム
FGF21を全身的に投与すると、血糖・中性脂肪が低下、β細胞の機能と量が保持、肥満と脂肪肝が改善、レプチン抵抗性が改善、LDL-Cが低下・HDL-Cが増加、adiponectinが増加、心血管リスクファクターマーカーが減少するなどの効果が見られる。これらの統一的なメカニズムは明らかではないが、いくつかの仮説が報告されている。FGF21の肝におけるインスリン抵抗性改善作用や脂肪組織におけるlipolytic活性によるFFA低下作用、FGF21投与によるエネルギー消費亢進、などがそれである。FGF21を投与すると視床下部に作用して、Agouti-related peptideやneuropeptide Y産生が増加するという報告もある。

FGF21抵抗性
代謝異常を示すヒトやげっ歯類で高インスリン血症および高レプチン血症が見られるように、血漿FGF21値も高値を示しており、「FGF21抵抗性」の概念が提唱されてきた。ob/obマウスや高脂肪食負荷マウスでは、血中FGF21値が増加しており、FGF21投与に対する反応が低下している。これらのマウスでは、FGF21標的臓器でFGFRやKLBの発現が低下しているとする報告もある。

FGF21関連研究の将来
FGF21に関する報告は2005年以来毎年倍増しているが、FGF21の理解はいまだに断片的で議論が分かれるところである。チアゾリジン系薬剤がFGF21およびKLBの発現を増やし、FGF21感受性を上げるという報告があり、抗糖尿病薬の効果の一部がFGF21経路を介しているという可能性もある。現在、FGF21の変異体やFGF21アゴニストが、薬剤の候補として臨床研究に応用されつつあり、今後の代謝疾患の治療において有望な手段となるかもしれない。
by md345797 | 2011-12-27 17:35 | インスリン抵抗性