人気ブログランキング | 話題のタグを見る

一人抄読会

syodokukai.exblog.jp
ブログトップ

TAK-875とプラセボとグリメピリドの2型糖尿病に対する効果:第2相ランダム化試験

TAK-875 versus placebo or glimepiride in type 2 diabetes mellitus: a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

Burant CF, Viswanathan P, Marcinak J, Cao C, Vakilynejad M, Xie B, Leifke E.

Lancet. 2012 Apr 14;379(9824):1403-11.

【まとめ】
膵β細胞において、遊離脂肪酸受容体1(free fatty acid receptor 1:FFAR1;別名GPR40)が脂肪酸によって活性化されると、グルコース依存性のインスリン分泌が促進される。そこで、この受容体の選択的活性化薬であるTAK-875が、2型糖尿病患者において、低血糖のリスクなく血糖コントロールを改善できるかを検討した。本研究は、外来2型糖尿病患者を対象とした第2相ランダム化二重盲検比較試験で、426名の患者をプラセボ群、TAK-875(6.25、25、50、100、200 mg)群およびグリメピリド(4mg)群(各1日1回)にランダムに割り付け12週間経過観察した。一次アウトカムは、ベースラインからのHbA1cの変化とした。12週後のHbA1cのベースラインからの低下は、TAK-875群50mgで-1.12%、グリメピリド群で-1.05%、プラセボ群で-0.13%であった。TAK-875投与群の低血糖イベント(3%)は、プラセボ群(2%)と同様であったが、グリメピリド群では有意に高値(19%)であった。TAK-875は、2型糖尿病患者の血糖コントロールを、低血糖のリスクなく、有意に改善することができた。この結果から、FFAR1の活性化は2型糖尿病治療の重要なターゲットになると考えられた。

【論文内容】
遊離脂肪酸受容体であるFFAR1(GPR40)は、膵β細胞に多く発現し、不飽和中鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸によって活性化される。FFAR1が脂肪酸によって活性化されると、グルコースが高濃度のときのみインスリン分泌を増強する。このグルコース依存性インスリン分泌の増強のメカニズムは明らかではないが、GLP-1による増強経路とも異なることが示唆されている。いずれにせよ、FFAR1活性化は、2型糖尿病患者において、低血糖を起こすことなく血糖コントロールを改善することが予想され、実際糖尿病マウスの実験でもそのような結果が報告されていた。

TAK-875(Takeda Global Research and Development提供)は、経口の強力なFFAR1選択的アゴニストであり、小規模臨床試験でグルコース依存性インスリン分泌を改善することが示されていた。本研究では、TAK-875の2型糖尿病患者に対する効果と安全性をプラセボおよびグリメピリドと比較することにより検討した。
426名の2型糖尿病患者(食事・運動療法でコントロール不良、76%がメトフォルミンを内服)を、プラセボ群、TAK-875群(6.25 mg、25 mg、50 mg、100 mg、 200mg)、グリメピリド群(4 mg)の7群にランダムに割り付けた。12週間後のHbA1cの減少は、プラセボ群で-0.13%であったのに対し、グリメピリド群で-1.05%、TAK-875の50mg以上の投与群で約-1.0%であった。12週間後の空腹時血糖の低下も、TAK-875の25-200 mg服用群およびグリメピリド群ではプラセボ群に比べて有意に大きかった。12週間後に行ったブドウ糖負荷試験(GTT)時のグルコースのAUC(area under the curve)は、プラセボ群に比べ、TAK-875投与群とグリメピリド群で有意に少なかった。この時のインスリンのAUCは、TAK-875投与群とグリメピリド群とプラセボ群で有意差はなかった。

12週間後のインスリン感受性(Matsuda indexで評価)の変化は、プラセボ群とグリメピリド群とTAK-875群で有意差はなかった。また、insulinogenic index(ここではGTTの最初の30分のC-peptide:glucoseの比)の比較によると、TAK-875投与群(25、100、200 mg)でプラセボ群に対してグルコース応答性のインスリン分泌の有意な増加が認められた。グリメピリド群は、プラセボに対して有意なグルコース応答性インスリン分泌の増加は認めなかった。

12週間の体重の変化については、グリメピリド群ではプラセボ群と比較し1.59 kg増加していたのに対し、TAK-875群ではプラセボ群と比較し0.86-1.27 kgの増加にとどまった。

発生した有害事象の発症率はプラセボ群とTAK-875群で同じであったが、グリメピリド群で高かった。そのうち低血糖の頻度は、プラセボ群とTAK-875群では同じく低かったが、グリメピリド群では有意に高かった。

【結論】
TAK-875は膵β細胞のFFAR1に対する直接作用によって、インスリン分泌を増強する。(なお、げっ歯類の動物実験では腸管内分泌細胞にあるFFAR1を活性化してGLP-1の分泌させることが示されており、これがTAK-875の上記の効果につながった可能性がある。)本研究の限界として、短期間(12週間)で小サイズ(各群60名程度)の検討であり、今後さらに大規模な研究が必要であろう。本研究では、2型糖尿病治療において、TAK-875によるFFAR1の活性化は、低血糖なく、また体重増加も少なく、血糖コントロールを改善することが示された。
by md345797 | 2012-04-23 21:57 | 大規模臨床試験