Resveratrol supplementation does not improve metabolic function in nonobese women with normal glucose tolerance.
Yoshino J, Conte C, Fontana L, Mittendorfer B, Imai S, Schechtman KB, Gu C, Kunz I, Fanelli FR, Patterson BW,Klein S.
Cell Metab. Published online October 25, 2012.
【まとめ】
Resveratrolは、代謝異常のマウスおよびヒトで代謝を改善することが報告されているが、正常耐糖能の非肥満者の研究はなされていない。そこで、非肥満・閉経後の正常耐糖能女性に対する、12週間のresveratrol 投与(75 mg/day)のランダム化二重盲検プラセボ比較試験を行った。その結果、resveratrol投与により、体組成、安静時代謝率、血漿脂質、炎症性マーカーは変化しなかった。安定アイソトープラベルトレーサー注入を行う2段階高インスリン正常血糖クランプを行ったところ、resveratrolにより肝・筋肉・脂肪組織でのインスリン感受性は増加しなかった。同様に、resveratrolにより骨格筋や脂肪組織での
SIRT1、
NAMPT、
PPARGC1Aの発現、AMPKのリン酸化に影響は見られなかった。以上より、非肥満、閉経後の正常耐糖能女性では、resveratrol投与の代謝に対する有効性は認められなかった。
【論文内容】
天然ポリフェノールであるresveratrolは、カロリー制限と同様の代謝改善効果をもたらすとされている。そのため、resveratrolサプリメントの売り上げは、米国だけでも年間3000万ドルに達しているという。現在までのデータは、高脂肪食による肥満モデルマウスにおいて、resveratrolがインスリン抵抗性や脂質を改善、炎症や酸化ストレスを抑制し、寿命を延長するというものであった。それに対し、正常マウスでは、インスリン抵抗性や脂質、寿命はresveratrolによってさらに改善されることはないことが報告されている。最近、肥満の2型糖尿病または耐糖能異常患者にresveratrolを投与するとインスリン感受性とミトコンドリア機能が改善し、炎症が抑制されることが示されたが、一般の非肥満の正常耐糖能者で同様の効果があるかは分かっていない。そこで、非肥満(正常および過体重)女性を対象に、12週間resveratrol(75mg/日)を補充するランダム化二重盲検プラセボ比較試験を行った。
Resveratrol投与による副作用はなかった
Resveratrol補充を受けた群(n =15; 58.2 ± 4.0歳)とプラセボ服用群(n = 14; 59.8 ± 4.3歳)のベースラインの特徴は同じであった。Resveratrol服用による副作用は認めず、resveratrol群で血中のresveratrolおよびdihydroresveratrolの値が上昇していた(プラセボ群ではいずれも認めず)。
Resveratrol補充は、体組成、代謝指標、インスリン感受性に影響なかった
Resveratrol補充の12週後の体重、体組成(脂肪量、除脂肪体重、腹腔内脂肪量、肝内トリグリセリド量)に変化なく、血漿グルコース、インスリン、脂質、adiponectin、leptin、炎症性マーカー(CRP、IL-6)、HOMA-IR、安静時代謝率も変化がなかった。より厳密にインスリン感受性を評価するため、高インスリン正常血糖クランプを行った、resveratrol投与により、肝(インスリンによる糖産生抑制)、脂肪組織(インスリンによるパルミチン酸放出抑制)、骨格筋(インスリンによる糖の消失率)に差はなく、インスリンリン感受性の改善は認めなかった。
Resveratrol補充は、代謝に有効な分子の変化をもたらさなかった
動物実験によると、resveratrolの効果は、AMPK、NAD+生合成、SIRT1(NAD+-dependent protein deacetylase)、PGC1α(
PPARGC1A)、
Ucp3発現増加によるミトコンドリア生合成の増加、という経路を介していることが知られている。さらにresveratrolによって
SIRT1、NAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase、NAD+合成酵素)、
PPARGC1A、UCP3の発現が増加する。ところが、この研究で骨格筋と脂肪組織でのこれらの発現を調べたところ、いずれもresveratrol投与により変化はなかった。さらにマイクロアレイにより、resveratrolで影響を受ける経路を検討するため、骨格筋・脂肪組織サンプルでマイクロアレイを用いたgene set enrichment analysis (GSEA)を行った。しかし、resveratrolはミトコンドリア機能、炎症、AMPK経路の遺伝子発現には変化を与えず、骨格筋において2つの経路(KINESIN_COMPLEX, false discovery rate [FDR] = 0.015; UBIQUITIN_LIGASE_COMPLEX, FDR = 0.216)に影響したのみであった。さらに、resveratrolは、骨格筋のAMPKのリン酸化やその経路に影響を与えなかった。
【結論】
Resveratrolは、肥満や代謝異常のヒトにおいてのみ代謝状態を改善するが、非肥満・正常耐糖能の女性には効果はなかった。