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2011年 04月 01日 ( 1 )

Vaptanによる低ナトリウム血症の治療

Vaptans for the treatment of hyponatremia.

Robertson GL.

Nat Rev Endocrinol. 2011 Mar;7(3):151-61.

【まとめ】
Vaptanは、細胞外液量増加型(hypervolemic)と細胞外液量正常型(euvolemic)の低ナトリウム血症に対する新しい治療薬である。非ペプチド性バソプレシンアンタゴニストで、腎のバソプレシンV2受容体に結合することにより、抗利尿効果を阻害する。この阻害により、水利尿が増加、体液水分量が減少し、血清Na値が上昇する。(血清Na値の上昇により、口渇とバソプレシン増加が起こり、vaptanの効果は抑制される。)

Vaptanは、特にうっ血性心不全・慢性肝不全に伴う細胞外液量増加型低Na血症に有効(現時点では水制限と利尿剤による治療しかない)である。また、SIADHによる細胞外液量正常型低Na血症にも有用である。急性症候性の低Na血症に対しては、高濃度食塩水を投与する場合よりvaptan投与が有効かどうかは患者によって異なる。Vaptanは、細胞外液量減少型(hypovolemic)(バソプレシンによらない不適切な抗利尿)の低Na血症には禁忌である。

【低Na血症】
血漿浸透圧・血清Na濃度が高値になると口渇が働き、バソプレシン分泌(抗利尿作用)が刺激されることによって血漿浸透圧・血清Na濃度は一定に保たれる。ここで問題になる低浸透圧性低Na血症は、次の3タイプに分けられる。

細胞外液量増加型(hypervolemic)低Na血症:
うっ血性心不全や肝硬変によって有効血液量が低下し、近位尿細管での水・Na再吸収亢進によって起きる。浮腫などのvolume expansionの症状がみられる。治療は、Naを補うのではなく、水を減らすことである。水制限が必要であるが、十分な治療法とはいえない。

細胞外液量減少型(hypovolemic)低Na血症:
消化管(慢性下痢)や腎(利尿剤の乱用)で、水と電解質が失われている場合に起きる。通常、レニン・アルドステロン系の増加が起こるはずであるが、原発性副腎不全(Addison病)でアルドステロンが低下している場合にはこのタイプの低Na血症が起きる。細胞外液量の低下により口渇が刺激され、さらに低Na血症が進む。細胞外液喪失の症状(起立性低血圧、頻脈など)が特徴的。治療は、水を減らすのではなく、水とNaを増加させることである。生食(0.9%)または高濃度食塩水(3%)の静注が必要である。

細胞外液量正常(euvolemic)低Na血症
主に尿希釈の異常で起き、SIADHによるものが代表的である。原因としては肺炎、悪性疾患、喫煙、さらには特発性のものもある。家族歴がある場合、V2受容体の活性化型遺伝子異常ということがある。治療は、水を減らしNaを増加させることであり、水制限と高濃度食塩水の静注である。低Na血症の治療はいずれも、浸透圧性脱髄(osmotic myelinization)を防ぐため4時間で2mmol/l程度の回復を目標とする。

【Vaptan】
数種のvaptan(mozavaptan(注:フィズリン® )、 conivaptan、tolvaptan(サムスカ® )、satavaptan、lixivaptan、RWJ351647)が利用可能で、conivaptanのみ静注可能だが、すべてのvaptanは経口薬である。

細胞外液量増加(hypervolemic)低Na血症に対する効果:
うっ血性心不全・肝硬変に対するvaptan投与は、尿量を増加させ血清Na値を上昇させた。ただし、長期死亡率や再入院率の改善は今のところ示されていない。

細胞外液量正常(euvolemic)低Na血症に対する効果:
SIADHおよび心因性多飲による低Na血症には効果があるが、V2受容体活性化型遺伝子異常には効果がない。

有害事象:Vaptanで血清Na値が急に高値に上昇しすぎた場合、浸透圧性脱髄が生じる恐れがあるが、今までの臨床試験では認められていない。いずれにしろ、血清Na濃度の上昇を注意深く観察する必要がある。

【結論】
Vaptanは水利尿を起こし血清Na濃度を上昇させるため、細胞外液増加型または細胞外液正常型の低Na血症の治療に有用である。その効果は早く、数時間後から12-24時間後まで持続する。Vaptanは亜急性もしくは慢性のSIADHの治療に有効だが、急性、症候性または高度なSIADHに対しては3%高濃度食塩水静注の方が安全で安価である。また、vaptanは水とNaの欠乏がみられる細胞外液減少型の低Na血症にも用いるべきでない。
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by md345797 | 2011-04-01 20:05 | 症例検討/臨床総説