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2011年 04月 09日 ( 1 )

青年期BMIの推移と成人期の糖尿病および冠動脈疾患発症のリスク

Adolescent BMI Trajectory and Risk of Diabetes versus Coronary Disease

Tirosh A, Shai I, Afek A, Dubnov-Raz G, Ayalon N, Gordon B, Derazne E, Tzur D, Shamis, A Vinker S, Rudich A.

N Engl J Med 2011 Apr 7 ; 364:1315-1325

【まとめ】
青年期(adolescence:本研究では17歳時)から成人期(adulthood)にかけてのBMIと、若年成人期(25-45歳)における肥満関連疾患(2型糖尿病と冠動脈心疾患)発症の関連は十分に説明されていない。そこで、17歳の健康な若年男性37,674名を平均17.4年追跡し、定期的に身長体重を測定、2型糖尿病と(血管造影で確認された)冠動脈心疾患の発症を調査した。追跡期間中、糖尿病の新規発症1,173例と冠動脈心疾患327例を認めた。多変量モデルにおいて、青年期のBMIの増加は、糖尿病と冠動脈心疾患の有意な予測因子であった。BMIを連続変数として補正すると,成人期の BMI 増加のみが,糖尿病と有意に関連した。冠動脈心疾患には,青年期と成人期の両時期の BMI 増加が独立して関連した。

結論として、(1)青年期の BMI 増加は、成人期の肥満関連疾患の重要な危険因子となる。(2)糖尿病のリスクは,診断時に近い時点の BMI 増加と主に関連するが,冠動脈心疾患のリスクは青年期と成人期の両時期の BMI 増加と関連する。以上より、冠動脈心疾患の発症を引き起こす過程は,糖尿病の発症を引き起こす過程よりも緩やかであるという仮説が支持される。

【論文内容】
小児期、青年期にかけてのBMI高値が、その後の肥満関連疾患の発症および死亡のリスクになっているかどうかははっきり結論が出ていない。そこで、イスラエル国防軍・医療部隊の健康な若年男性37,674名(平均17.44歳)を17.4年間、身長と体重を定期的に測定し追跡調査した。その間、1,173例の糖尿病新規発症と327例の血管造影で確認された冠動脈疾患発症を確認した。

このコホートをBMIをもとに10群(十分位群)に分けたところ、年齢、糖尿病の家族歴、血圧、身体活動レベル、血糖、中性脂肪で補正した多変量モデル(論文のTable 2, Model 3)において,「青年期 BMIの増加」は、糖尿病の有意な予測因子であった(最高十分位群を最低十分位群と比較したハザード比は2.76)。

同様に、年齢,冠動脈心疾患の家族歴,血圧,身体活動レベル、喫煙、LDL-C、HDL-C、中性脂肪で補正した多変量モデル(論文のTable 3, Model 3)において、「青年期 BMIの増加」は、冠動脈心疾患の有意な予測因子であった(最高十分位群を最低十分位群と比較したハザード比は5.43)。

成人期の BMI でさらに補正したところ、青年期 BMI と糖尿病との関連は排除されたが(ハザード比 1.01、論文のTable 2, Model 4),冠動脈心疾患との関連は排除されなかった(ハザード比 6.85、論文のTable 3, Model 4)。

一般的に用いられる成長曲線を用いて、青年期から若年成人期に至るBMIの推移曲線(trajectory)を作成した。1年間のBMI増加は17-30歳までが0.3/年、それ以後(45歳まで)が0.2/年である。ここで、糖尿病と冠動脈心疾患の発症は、成人期のBMIの増加より青年期のBMI増加の方がより関連しているかどうかを調べるために、多変量Coxモデルを用いた。この多変量モデルにおいて BMI 値を連続変数として補正すると,「成人期の BMI 増加」のみが,糖尿病と有意に関連した(β=1.115、P=0.003).一方,冠動脈心疾患には,「青年期(β=1.355,P=0.004)と成人期(β=1.207,P=0.03)の両方の BMI 増加」が独立して関連していた。

【結論】
青年期(17歳頃)のBMIは、若年成人期(25-45歳)において、現在のBMIが正常であっても冠動脈心疾患の独立した予測因子となる。同様に青年期のBMIは2型糖尿病の予測因子であるが、成人期のBMIは独立した予測因子にはならない。このことは、糖尿病と冠動脈心疾患のリスクを推定するのに、BMI歴を考慮することが臨床的に重要であることを示している。
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by md345797 | 2011-04-09 17:18 | 臨床研究