Hypothalamic AMPK and fatty acid metabolism mediate thyroid regulation of energy balance.
López M, Varela L, Vázquez MJ, Rodríguez-Cuenca S, González CR, Velagapudi VR, Morgan DA, Schoenmakers E, Agassandian K, Lage R, Martínez de Morentin PB, Tovar S, Nogueiras R, Carling D, Lelliott C, Gallego R, Oresic M, Chatterjee K, Saha AK, Rahmouni K, Diéguez C, Vidal-Puig A.
Nat Med. 2010 Sep;16(9):1001-8.
【まとめ】
甲状腺機能亢進症や中枢神経へのT3(triiodothyronine)の投与によって、視床下部のAMPKが不活性化され、これに伴い交感神経系(SNS)が活性化され、褐色脂肪組織(BAT)での熱産生マーカー遺伝子の転写が活性化されることが明らかになった。従来は甲状腺ホルモンが末梢組織(筋肉)に作用し、熱産生を起こすと考えられていたが、中枢を介した新しい作用メカニズムが明らかになった。
【論文内容】
T4(thyroxin)を投与した甲状腺機能亢進ラットでは、視床下部のAMPKリン酸化が低下、ACCのリン酸化が低下(リン酸化低下により活性上昇)し、視床下部のmalonyl-CoAが増加した。
Aminotriazoleを投与した甲状腺機能低下ラット では逆のことが起こるが、そこに甲状腺ホルモン(T3)をicv投与すると、上記のように視床下部でAMPK、ACCのリン酸化低下が起こり、さらにBATでの熱産生マーカー(UCP1など)の転写が活性化し、体重が減少した。ここに、SNSのβ3‐adrenoceptor阻害剤(SR59230A)を投与すると、BATでの熱産生マーカー転写活性化、体重減少が阻害された。
甲状腺ホルモン受容体(TR)のdominant-negative アデノウイルスを視床下部の腹内側核(VMH)に注入すると、BATでの熱産生マーカー転写活性化、体重減少が阻害された。
視床下部の
de novo lipogenesisを阻害するため、ACC阻害薬(TOFA)を投与すると、視床下部のmalonyl-CoAが減少、BATでの熱産生マーカー転写活性化が低下した。AMPKのconstitutive-activeアデノウイルスをVMHに投与しても、ACCリン酸化(活性低下)に伴い、同じ現象が起こった。
AMPKのdominant-negativeアデノウイルスをVMHに注入するとAMPK活性低下、ACCリン酸化低下(活性増加)、視床下部のmalonyl-CoA増加、BATでの熱産生マーカー転写活性化、体重減少が起こった。この効果はSNSのブロック(SR59230A)で阻害された。
【結論】
以上の結果から甲状腺ホルモン(T3)は視床下部のVMHでAMPKを不活性化し、ACCリン酸化低下(活性化)により視床下部のmalonyl-CoAを増加させ、この視床下部での
de novo lipogenesisがSNSを活性化し、BATでの熱産生、体重の減少へとつながると考えられる。